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2006年02月24日

『「へんな会社」のつくり方』を「へんな研究室」の視点で読む

この奥出研入門では必読本以外にも、研究やものづくりの参考になりそうな新しめの本も紹介していこうと思います。 今回ははてなというウェブサイトを運営・開発している 株式会社はてなの社長である近藤淳也さんが著した『「へんな会社」のつくり方』を紹介します。

「へんな会社」のつくり方 「へんな会社」のつくり方

この本を奥出研的視点で捉えて読んだときまず最初に感じたことは、

『ああーー、おれらも十分「へんな研究室」だな』

ということです。「へんな会社」という本の題名は、 近藤さんがよく他の人から「はてなってへんな会社ですね」と言われることからとったらしいです。 なので、 私が自分で自分達の研究室を「へんな研究室」と呼ぶのは自虐的もしくは見方を変えると自己満足的であると考えることができますが、 まあそこは字面上ご了承ください。 「へんな研究室」、このように感じた理由は、「へんな会社」はてなの社内コラボレーションの手法や方針が、 非常に奥出研と似ていたこと、そして、参考にできる部分がいくつかあるからです( もちろん、奥出研は他の研究室、他大学の研究室とは似つかない側面をかなり持っているからというのも確かです)。 この本の一般的な見方は「はてなのオープン経営術」という視点ですが、 今回は「はてなのコラボレーションの手法と奥出研のそれと相似点を見つけて、さらにはてなを参考にする」 という試みをしてみたいと思います。

P11 「ルールはハックするから面白い」

この本の冒頭で近藤さんの思想が語られていますが、その一つに「既存のルールに凝り固まらず、 日々新しいルールを考えていくのが面白い」というのがあります。 私はこの「ハック」という言葉が大好きで…というのは置いといて、 奥出研にもそのような傾向が例えば「遊び」の中にも見て取れます。 特に私が面白いと感じているのは、「奥出研的誕生日の祝い方」です。 普通友達の誕生日を祝うというと誕生日ケーキを買って来てあげて、色紙を書いて、プレゼントを渡すといった具合でしょうか。 これだけでも十分面白いとは思いますが、奥出研の場合はそうした「誕生日の祝い方をハック」して馬鹿げたことをしてきました。 例えば、友達の誕生日を祝うために彼をモチーフにした壁紙や、彼のブログのRSSリーダーを作ったり、 メッセージを録音してそれをサンプリングして曲にしてCDとして渡したり、 みんなで彼の顔写真をプリントアウトしてそれをお面にしてさながら「マルコビッチの穴」のように騒いだり、 リアル「SPAM」缶をプレゼントしたり… まぁ単なるお遊びですが、この「ルールはハックするから面白い」という姿勢は今後も参考にしていきたいなと思います。

参考サイト、というか全部私の日記です(笑:

P32 「情報は閲覧者が選択する」

簡単にまとめると、組織において「情報をどう出すべきかを発信者が判断する」のではなく、 「その情報を閲覧者が読むべきか判断する」という仕組みを作ることが大事ということです。 この「オープンにすること」に対するメリット・デメリットはいろいろ議論できる点で、 100%はてなのオープンな姿勢を真似する必要は奥出研においては無いとは思います。 ですが、参考にはなるところです。 奥出研では、メーリングリストをかなり頻繁に使ってコミュニケーションをとっていまして、 メーリングリストのメンバー内での情報の共有はかなりできてますが、 それ以外の人はその情報を閲覧することができない仕組みになっています。 この状態は必ずしもベストとは言えず、 だからと言って、研究室の履修者全員が全てのMLの履歴をウェブで見れるようにすればいいかと言うと、 そうでは無いというのが現状だと思います。ただ、「ルールをハックする」という姿勢にのっとり 奥出研にとって改善の余地あり、といったところでしょうか。

P34 「会議の無駄を無くそう」

この姿勢はもちろん奥出研でも行っていますが、はてなのあるアイデアが面白かったです。 それは、毎朝の開発陣のミーティングを「立って行う」ということです。 試してみるのもありですね。

P40 「ペアプログラミング」

この辺から「仕事をする場所」というパートに入り奥出研との相似が顕著になります。 まずこの「ペアプログラミング」。 奥出研でも意識しているチームは導入してそれなりに成果が出てます。 とりわけ、奥出研の履修者はプログラミングのプロや電子工作のプロ、デザインのプロが集まっているわけではなく、 むしろ「初心者」が多いわけです。 そのような場合にこの「ペアプログラミング」をうまく導入すれば、「だれる」ことなく「お互いに成長しつつ」確実に開発が進むというわけです。 私も3年前ぐらいからペアプログラミングしてますね(参考 ゆーすけべー日記: 秋祭り、そしてDNPでXPプログラミング)。

P43 フリーアドレス

以下引用させていただきます。

はてなでは、オフィスにフリーアドレス制を導入しています。
フリーアドレスとは、社員の座席を固定せずに毎日好きな場所に座って仕事をするスタイルのことです。

これは奥出研まんまですね。

P57 開発合宿

はてなでは「既にユーザーに提供しているサービス」を改善する開発を行うと共に、 「新しいアイデアのサービス」も開発しています。 しかし、日常の業務では「既にユーザーに提供しているサービス」の開発に時間をとられ、 「新しいアイデア」を開発する余裕がなかなか無いという問題があります。 それを打開する一つの策がこの「開発合宿」です。以下引用させていただきます。

開発合宿は、5人ほどの開発者がインターネット環境のある高原のペンションなどに
3日間ほど缶詰になって開発を行う、というものです。

オフィスから場所を離れ、普段の仕事は持ち込まず、 「なにか新しいこと」を開発することだけに集中するというのです。 普段から悶々と感じている「やりたいこと」を形にできるというモチベーションが開発者の中に生まれるとのこと。 奥出研の合宿もこれに似ています。 毎年春と秋に開催される合宿では、3人から5人のある程度ランダムな組み合わせでチームを組み、 その合宿の期間内だけで「ものづくり」を行います。 最後にはプレゼンテーションがあって、実際にデモを行い、先生やメンバーが得点をつけて順位を競います。

はてなブックマーク」はこうした開発合宿から生まれたものです。 奥出研でも昨年のインタラクション2004という学会で好評を得た「ぬくぬくキー」というプロダクトはこの合宿がきっかけで生まれました。

ちなみに、ぬくぬくキーの電子デバイスを作ったのは私です。 さらに、この奥出研の合宿の「その場でチームを組んで期間中に一つのプロダクトを作る」というスタイルは、 私が始めた「プラプリ(Practical Applicationの略のつもり)工房」というのがそもそもの発端です。 と自分の功績を自分で言わせていただきました。

参考サイト

P94 50%の完成度でサービスをリリースする

近藤さんのはてなを象徴するいい言葉があるので引用させていただきます。

…ただし、そもそもプロトタイプと製品の境界がなく、
いつまでもプロトタイプであり、かつ最初から製品である、という状態が、今のはてなのサービスです。

私と2人の3名で2004年度の秋にはじめたmoo-pongというプロジェクトで意識したことは、 「とにかく毎週何かしら作ってみて、自分達で使ってみる、もしくは誰かに使ってもらう」ということです。 それまで奥出研でいろいろなものを作ってある程度社会的にも認められる機会もありましたが、 何か腑に落ちないところがありました。それは、 「ものはできたけど、だれもが使って楽しめるサービスとしては提供できてない」という点でした。 なので、製品とまではいかなくともせめて「デモ展示」会場では楽しめる、体験できるものを作りたいというのが目標だったのです。 それが幸をそうしたのか、moo-pongは今や(ある程度)人気物になりました。 しかし、まだまだプロトタイプだと思って、日々進化させて行きたい、そして、そのうち「デモ展示」会場以外のより身近な場所で、 ユーザーに使ってもらいたいと願っています。

参考サイト

まとめ

以上、はてなと奥出研のコラボレーションにおける相似点を見つけて来ました。 他にも参考になる点がいろいろ詰まっているのですが、きりが無いのでここらでおしまいとさせていただきます。 最後に一つ。「へんな」ことであるのは、悪くないのですが、あまりにも「へんな」という状況に慣れてしまうと、 ただの「変体」になります。最近ここらが結構奥出研にとっての課題の一つでもあるのかなと感じるのです。 もしくは私自身の問題かもしれません(笑。 ですが、もっと「へんな」ことやって楽しんでいきたいのも確かです。

2006年01月30日

本の紹介について

奥出研にいるとたくさん本を読まなくてはいけません。輪読という形で半強制的に読んだり、でも、自主的に本を読んでいくと勉強になります。